禁煙ブームにより工場内も喫煙禁止
サル山のサルではないですが、閉鎖空間に集団が存在すると、ヒエラルキーが存在します。工場という空間では当然の様に役職ではないあいつとこいつのどちらが上かといったマウンティングが頻繁に行われます。
どちらが上とか下といっても、その判別は大したことがあるわけではなく、給料をどれだけもらっているかとか工場長をどれだけ脅した経験があるかとか、正直くだらない内容であることが多いです。
喫煙率も他の職場に比べるとかなり高いのではないかと思います。おおよそ工場勤務者の8割ぐらいは喫煙者です。工場だって最近の意識高い系の影響を受けています。というよりもわが社の本社の2世社長さまが以上に意識高い系で、給料は極力減らそうとするくせに、社員のためにという言い訳の元に様々な働き方改革と言う嫌がらせを繰り出してきます。
残業抑制、仕事の能率化、受動喫煙の禁止、結局すべて社員の自由を縛るか、給料が減る方向に向かっています。
「休憩時間以外の喫煙を禁止します。さらに、喫煙所以外で吸わないように。」
工場長が朝礼で怯えた目をしながら2世社長の意識高い系通達を読み上げます。工場の人たちからの突き上げがあきらかであるためです。
ウチの会社は男性が多く、女性は基本的に事務職で煙草を吸わない人たちです。禁煙には賛成なので今回は愚痴がありません。不満が多いのが工場の人たちです。工場は製品の移動もあり、ベルトコンベアー式に流れるほど効率化はされていません。
製品の移動の合間に待機時間が生じてしまう場合が多く、その間に一服したい思ってしまうのです。
来客も例外は無しが裏目に
工場で働く人もそうですが、私の働いている分野は管理者側も含めて喫煙者が多い業界です。最近では禁煙運動も広まってきてはいるものの、完全禁煙はできていません。しかし、今回親会社の2世社長の独断で、喫煙所以外の喫煙を認めないということにしたそうです。
喫煙所は工場と事務所の建物の通路にあり、屋根はあるものの事務所の建物からは完全に別の場所になります。
お客さんもそこで吸うことを指示しろということになりました。
工場では、顧客要求がきちんとできているか確認する「製品の検査」という行事があります。これは、工場で製作している製品が顧客要求に適合している確認する検査です。大体は形だけなのですが最近の様々な品質偽装から厳しくなっているらしくチェックも厳しくなっています。手順を資格を持った人間がきちんと確認していないと「ルールが違う!」と大騒ぎになってしまうのです。
我々は、そのあたりを阿吽の呼吸で乗り越えて無難に済ませるのが仕事の一つなのですが、ある顧客は品質が要求通りにできているかに関しての書類がそろっているか厳しい人で検査が長時間に及びました。その顧客氏は、スモーカーでどうしても一服したいと言い出したので、営業の人に頼んで喫煙所に一緒にいってもらって煙草休憩の時間をとることにしました。
顧客がたばこ休憩から帰ってきたら怒りマックス
なんとかなりそうだと安堵の表情でくつろぐ我々の元に顧客氏が休憩から帰ってきました。営業の人がなぜかちょっと気まずそうでな顔で事務所に入ってきます。顧客氏は憮然とした表情で話を始めます。
「工場の社員が ”ウチ(顧客氏の会社の製品)の製品はルールが多く、守っていられない。そんなの守るわけないだろ。”という話をしていたのを聞いた。」と、え~全部台無しだよ…。といいつつ目配せして作戦をとる我々。
プリプリ怒った顧客氏は、「金は払わん!」と吐き捨てるように言って事務所から出ていこうとします。あわててそこをなんとかと言って止める我々。
現実的な話をすると、わが社の製品を受け取らないと困ったことになるのは顧客氏でもあるのでなんとか落としどころを探す必要があります。このままではどちらも不幸になる可能性があるのです。
工場長が相手先に出向き、謝罪することでなんとか事を納めることができました。
喫煙所をどう運用するかについても工場の管理者で話し合った結果、自分の持ち場で煙草OKということになりました。工場の職人は、誰もが俺が工場長に意見したので元に戻ったと武勇伝の様に語ります。それを我々は微妙な愛想笑いとともに相槌をうっています。