Fラン大学生自分の実力を勘違いしやすいので、自身の能力を過剰に評価するタイプもよくいます。縁の下の力持ち的なポジションが彼らにはふさわしいのですが、脚光をあびるようなポジションというか、人から賞賛されるような地位に関単になれると思いこんでいます。そういうポジションになれるように努力をしているかといったらもちろんそんなことはなく、でもなぜか「自分にはできる。ひかえめにゆって(言って)自信しかない。」と未来は明るいようです。
脚光をあびるような仕事というとFラン学生が思いつくのがアーティストかプロデューサーです。
アーティストになりたい!
夢見る学生君はアーティスト志望です。彼の将来の希望を聞いたときに「僕はアーティストになりたい。」と言いました。
アーティスト?何の?
「何でもいいです。とにかく何かを表現したい。」
要は人からちやほやされるものであれば何でもいいようです。なんじゃそれ。
ただし、高校まで特に美術部だったり音楽をしているわけではありません。県の大会などで入選した経験もありません。自分の中の何かを表現すれば他人から評価されると思っているようです。何かって何?
「多分先生には理解できないと思います。」真剣なまなざしで自分の中に確かにあると信じている何かがいつか目覚めだしおもむろに創作活動に突き進むはずだ。と妄想を話し出します。ちょっと怖かったです。暴力衝動の方に突き進まないように祈るばかりです。
Fラン大学に関わらず、こういう学生は年に何人かでてきます。親も裕福なのか鷹揚なのかあまり意に介さない方が多く、本人の好きなようにさせたいという人たちが多く、我々教員を困らせます。
夢見る学生君は最終的に服飾に目覚めたらしく、斬新なデザインの服を作ると一生懸命デザインしていました。
最近では、ある程度の数の作品を作ることができれば、自分の個展も短期間であれば開くことだって可能です。作品が売れなくたってお客さんがほとんど来なくたって構いません。友人は数人は来場してくれるでしょうし、安価であればいくつかの作品は売れることもあるでしょう。それで一人前の「アーティスト」の誕生です。
夢見る学生君は大学をやめると言い出しましたが、さすがに教員の我々はそれを止めました。「とりあえず休学にしよう。」と説得し、本人もその時は了解しました。
地域情報サイトに取り上げられる。
夢見る学生君は短期間で間借りできる場所を見つけてきて、一時的に自分の作品を売り出す期間限定ショップを開設しました。
ある時、地方の頑張っている若手アーティストを特集するという名目で地域情報サイトに取材をされたようです。記事内容では数点売れたとのことで、インタビューも残っています。
休学の件はインタビューの中にはでてきません。エピソードは他者に多く評価されるものよりは、誰か一人の心に刺さるものが作りたいと言っていました。こうなったらもう止まりません。もう彼は「アーティスト」なのです。
個展を数回開催したようで、自意識は止まりません。最終目標はニューヨークだそうです。ただ、そこから個展を開いてもあまり盛況にはならず、あたま打ちになってしまっているようです…。
夢をあきらめるか
ツイッターのフォロワーは2人、個展の開催を何度も繰り返しつぶやいていましたが、反応はゼロ…。もう一つのアカウントは誰もつぶやきは多いものの誰も反応せず。インスタグラムの方は割とフォロワーもいるようです。Fラン大学生にありきたりの「誰にも師事していない」「全部独学」を売りにしているようです。
個展での反応もかなりよかったと自分では言いますが、資金は潤沢にあるようです。
彼のまだ救いのあるところはいまだ休学にしているところです。アーティストを一時的でもあきらめて大学を卒業できる可能性があるのです。
アーティストになって2年になります。はやく現実との折り合いをつけてくれるといいと思いながら見守っています。