社内ニートである我々の部署は、たまにわけのわからない雑用を押し付けられることもあります。部長から、工場が老朽化してきているので改修工事がはじまるので、常に立ち会って確認をして欲しいと頼まれました。
改修工事中はずっと現場にいて確認していなければならないようです。年下上司氏は、一時工場の職人として働いていたので寒さとかも慣れているようですが、私は根っからの事務職タイプで、夏の暑い時期やや冬の寒い時期はなるべくエアコンが聞いている室内で暮らしたいタイプです。
二人で交代でいいのではと思ったのですが、どうやら二人で一緒に確認していろとの指示です。
「今1月ですけど…。(寒いのでやりたくないです。)」
「だから何?」とさらに温度を下げそうな冷たいまなざしをこちらに向けてきます。
業績も段々先細りとなり、業績のでない部署は閉鎖するのではないかといううわさもチラホラ聞こえてきます。
社内ニートである我々を一時的に外出させておいて何か策でもねろうかと考えているのではないかと勘繰ってしまいます。
とはいえ、実情を知っている部長の前では仕事があるからできませんなど、とても言えません。年下上司氏はそれでも「メールの返信をしなければ。」とか「費用の清算をしなければ。」とか抵抗しています。
「どうしても二人で立ち合いをやれ!」と年下上司氏の言葉を遮るように命令されました。
いつも擁護してくれる部長の指示であれば、それ以上逆らってもしかたがありません。寒空の中、工場の外側の改修に立ち会うこととしました。防寒着をきて現場に向かうと職人さんたちが既に作業を始めています。外壁がボロボロではがれかけてきてすきま風が工場に吹き込むようになっていたため、外壁そのものを付け替える工事です。
「寒いですね。」といいつつ年下上司氏と腐った魚のような目をして改修工事を見守ります。寒空の中、一体自分は何をやっているのだろうかと思うこともありますが、普段はあまり役に立たない社内ニートなのでしょうがないところもあります。ふと年下上司に目を向けると、貸与されたスマートフォンで最近お気に入りのキャバクラの女の子に一生懸命LINEを送っています。
最近だとスマホか寝ているかところしか見ていないので、何をしているのかと思っていたら、勤務時間中は次にお店に行く日を打ち合わせているようです。
改修の場所は遠目に駐車場が確認できるのですが、我々が現場立ち合いを始めてしばらくしたら、数台の高級車がはいってきました。
どうやら社長を含む役員たち経営陣のようです。コロナ不況が身近に感じている昨今、仕事の先行きも先細り傾向であるため、経営の確認のための会議を行うようです。
ウチの経営陣は、我々のような部長職以下の社員とは基本的に話をしないという自分独自のルールをもっているのです。そのため、たいていの場合は工場長+αの役職者だけのTV会議なのですが、さすがに対面で状況を確認しなければならないと考えたようです。
普段来ないエライ人が来るときは何かを変化させたいとか方針を決めたい場合が多いです。もしかしたら工場の閉鎖も考えているのかもしれません。
しばらくしたら、休憩時間に部長が我々の元に温かい缶コーヒーを差し入れに持ってきてくれました。
年下上司氏はわたされた缶コーヒーを受け取って礼をいうものの、「好きなコーヒーはこれじゃないんですが。」とさらに気温を下げるようなことを平気で言います。「休憩時間なのでトイレに行ってきます。」と現場からいなくなります。
キャバ嬢との楽しいLINEの会話がとぎれないのか、スマホをみながらトイレの方向に歩いていきます。
最近の年下上司氏は空気が読めないというか、「普通こういうタイミングでこんな発言する?」という時に周囲と摩擦を起こすような発言が目立ちます。
奥様と上手くいってないようでイライラしているらしく、迂闊な発言が目立ちます。
「社長たち来ています?」私が部長に訪ねると社内の状況調査をしにきたらしいと返事がありました。「工場長の報告が終わったら、事務所内を確認するので君たちはそれまで事務所に戻ってこないでほしい。君たちをあまり見られたくないし、余計なことも話してほしくないので。」
どうやら我々社内ニートグループは、経営陣の目から遠ざけるために今回の雑用を言いつけらえたようです。昼寝でもしているところを社長にみられたら確かに大変です。おとなしく寒空の中で改修工事の立ち合いに全力を尽くそう。そう心に誓いを立てたところで年下上司氏が社長と話をしています。トイレから帰ってくる間に社長とばったりあったようで、何やら注意されたようです
現場立ち合いに行くまでPCでソリティアのゲームをしていたようで、それを閉じずにこちらにきてしまったようです。
会社のPCでゲームとは何事か、今がどういう状況なのか理解できているのか。その日は部長と年下上司氏はかなり怒られた模様です。ポンコツは制御できない。どんなに気をまわしても無能はそれを上回る間抜けな行動をとる。改修工事が進み、外壁がキレイになっていく工場をみながらもしかしたら部署移動もあるかなと思いながら缶コーヒーを飲みほした。