私の勤めている会社は工場で製品を生産します。会社の利益のほとんどをその製品の売り上げで占めており、私の部署はその業績にすがって生きている寄生虫のようなものです。いつまでも工場の製造に頼るのではなく、新しい事業の形態を模索したいという経営陣の意向により我々の部署は細々と存続しています。いつ「明日から工場で作業してもらえないか。」と言われるかビクビクしているところです。
わが社で事務系から工場に行った人間は再び戻されることはありません。片道切符なのです。会社を辞めるか、工場作業で我慢するか…。二択を突き付けられます。事務職で入社したAさんは妻子持ちで課長まで出世したのですが、使えないということで工場内の加工係を命じられてしまいました。慣れない作業の中でかなりお疲れ気味であったのですが、最近では班長としてがんばっています。
さすがに辞令がでた直後にその話をするのは憚られたのですが、飲み会の席で尋ねたところ、「最初は落ち込んだし転職も考えたけど、今より給料が高い保証は無いし家族も養っていかないとならないしね」と吹っ切れたように話をしてくれました。
工場の中というのはどこでも職種により違いはあると思いますが、掲示物が多いです。よくみかけるのは「安全第一」と「顧客満足度の向上」です。これらのスローガンや標語をポスターとして貼っていて、朝礼時に唱和するなどということもひと昔前にはよく行われていました。最近では、二交代制などで勤務形態も多様化しているため、工場勤務の社員全員が朝礼を行うことも少なくなりました。
朝礼などのすべての社員が参加する行事が少なくなると、そうしても会社での一体感というのは希薄になります。お互いが何をやっているか交流がないのでよくわからない。この間入社した新入社員がいつの間にか会社を辞めていなくなっていたということもよくあります。
顧客満足度の向上は、以前工場形態の会社ではかなり流行りであったISOの影響で工場内にドーンと全面にでてくるようになりました。
もちろん工場内の作業員は顧客の都合など知ったことではなく、自分の都合以外を気に掛けることはありません。顧客よりも週末に行くパチスロか、今月給料がどれくらいでて、こんどはいつキャバクラにいけるかの方が最優先事項です。
40過ぎたおっさんがYouTubeでパチスロの音楽を聴きながら、この演出はアツいとか、この鉄板リーチが2回来たのにはずれやがったと休憩時間が終了しているにも関わらず、隣の人に熱心に話しかけている姿をみると悲しくなります。
もう少しまともな話題はないのかと思いますが、パチスロに行けなくなった時がこの会社を辞める時だと公言しているパチンカスのおっさんなので、ズブズブにやられていたとしてもとりあえず出社はしてくれます。仕事が繁忙期かどうかはお構いなしにどんなに忙しくても自分の都合で毎年有休をすべて取るおっさんは、社内ニートである私から見てもうらやましい存在です。貯金はほぼ無いみたいですが。
なんだか人生を謳歌していてちょっとうらやましい気もします。
顧客満足よりも社員満足。工場勤務の魅力はこういうところにもあると思います。求職中のみなさんも食わず嫌いはやめて工場はどうでしょう?